バリスタも認めるWilfa SVART Aromaの実力は本物なのか?本格エスプレッソにも挑戦してみた

僕はこのWilfaのコーヒーグラインダーに否定的だ。理由は2つあって、ひとつはノルウェーの企業が製造しているとはいえ欧州では13,000円〜15,000円程度で販売されており、日本の25,000円前後の価格が高すぎると感じていた。

2つ目は、コーヒーショップがこぞって薦めるのがかえって胡散臭く感じてしまう。大衆迎合したくないという気持ちもあるが、欧州での販売価格(=原価の低さ)を考えるとそこまで性能の良い製品にはならないだろうというのが僕の考察だ。

家庭用コーヒーグラインダーを自称日本一理解している暁屋Coffeeだからこそできる、人気のWilfa SVART Aromaについて真実のレビューをしていきたいと思う。

Wilfa(ウィルファ)について

1948年に設立された生活家電を製造販売するノルウェーの会社。北欧らしい卓越したデザインが世界的にも高い評価を得ている。また製品の品質にもこだわりを持っており、「スマートなディティール」+「使いやすく機能的」な製品を提供することを掲げる。

実際に今回紹介しているWilfa SVART Aromaにおいてもデザインのみでなく、世界的に有名なトップバリスタを開発に関わらせるなど、品質や機能にも妥協しない。日本国内ではコーヒーメーカーのSVART Precisionも特徴的な美しいデザインでファンが多い。

所有欲を掻き立てる洗練されたデザイン

文句なしに美しい。シンプルの中に選ぶ色使いと各パーツデザイン。どういうセンスがあればこんな素晴らしいデザインが思い浮かぶのかと感心してしまう。
 デザインって商品選択の動機づけのとても大きな要素だよね

コンパクト設計

サイズは170 x 285 x 130mmとなっており、画像でみるよりもずっと小さい。通常の500mmペットボトルと比較すると上の画像のとおり。

キッチンに設置するのもおしゃれにスッキリと置いておくことができる。
 実機を見るとより実感するけど、絶妙だね。

低速回転による摩擦熱を抑えたグランド

たくさんの電動コーヒーグラインダーをみてきたが、この低速回転というワードは非常に注意が必要。開発企業が、自社グラインダーのパワー不足を「低速回転によるコーヒー豆への摩擦熱を抑えてフレーバーの揮発を防ぐ」等の謳い文句ですり替えていることが物凄く多いからだ。

トルク(回転力)が小さいマシンは結果的にグラインド時間が長くなり、グラインド精度は落ちるだけでなく、長時間にわたり熱も伝わってしまうという本末転倒な器具が平然と販売されている。しかも安価な製品だけでなく高額のグラインダーでも散見されるから驚きだ。

Wilfa SVART Aromaについてレビューで調べたかったのは、この器具も欧州での販売価格から勘案すると、製品製造コストを抑えたことによる、モーターのトルク不足をAromaという低速回転による非熱伝導による恩恵へすり替えてクローズアップさせたであろうという事実であった。

しかし実際は違った。

このWilfa SVART Aromaはトルクが大きくパワーがあるが、RPM(一分間の回転数)が少ないDCモーターを搭載している。そのため、グラインドスピードは驚くほど早い。他のグラインダーの比較はデジベル比較時の記事を参考にしてもらうといいだろう。
 これは本当に驚いた。この性能は良い意味で裏切られた

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螺旋状のコニカル刃を使用

DCモーターの性能を活かす低速・すり潰しのグラインドに適したコニカル刃。

電動グラインダーの種類
・コニカル刃・コーン式…立体的な螺旋形状。フラット刃よりも低速な回転で豆を擦り潰すように砕く。回転数が低いため騒音や熱の発生を抑えることが可能

・フラット刃(カット式とグラインド式)…平らな形状の上刃と下刃が高速回転して豆を切り刻むように挽くタイプ。カット式は挽き時間が早く、微粉が少ない。グラインド式は臼のように砕いて挽くためカット式よりも均一性が高いことが多い。反面摩擦熱が入りやすい 

VARIO-Vとのコニカル刃比較

家庭用で「コニカル刃」「同価格帯」のコーヒーグラインダーとしては最強の呼び名の高いVARIO-Vとの比較は避けられないところ。

【外刃の形状】

比較してみるとWilfaに比べてVARIO-Vの刃はカットが複雑になっているのが分かる。よく見ると刃の下部に更に角度を変えてカットされており、豆がグラインドされる際に様々な角度で刃が接触するように研磨されている。

また刃の角度もWilfaよりも緩く(水平に近く)、手触り感もVARIOの方が鋭利。コニカル刃・コーン式で有りながらもカットすることをより意識した刃になっている。

刃の比較ではVARIOの方が優れているが、この価格帯で使用されている刃としてはWilfaも十分合格点だろう。

【内刃の形状】

内刃もやはりVARIO-Vの方が螺旋形状の複雑さと鋭利さに長けている。
 しかし正直Wilfaがここまで作りこんでいるとは思わなかった

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実際に豆を挽いてみた

Wilfa SVART Aromaのメッシュ(挽き目粒度)は17段階。

  • Steap スティーピング
  • French Press フレンチプレス
  • Filter フィルター
  • Aeropress エアロプレス
  • Mocca モカエキスプレス

と各抽出法には印が付けられていて目安にすることが可能。調節はホッパー部分を手で回して行うが、これもまた操作性が簡単かつデザイン性に優れていて好感が持てる。
 Steapはスティーピングのことで、浸漬して上積みを飲む抽出法のことね。

【#Steap 粗挽き スティーピング、パーコレーター】

【#French Press 中粗挽き フレンチプレス】

【#Fillter 中挽き サイフォン、ネルドリップ】

【#AeroPress 中細挽き ドリップ(しっかり抽出)】

【#Mocca 細挽き モカエキスプレス】

印象としては思ったよりもバラツキが出るという感じ。特にフレンチプレス以上の荒いメッシュではかなり目立つレベル

細かいメッシュであれば精度はかなり上がるので、ハンドドリップがメインで、Clever(クレバー)やモカエキスプレスなどで細かい挽き目での使用が多い方には適していると思う。
 気になったのはエアロプレスの挽き目がモカの手前にあること。エアロプレスは中挽き〜中細で使用することが多いが、なぜこの位置にあるのだろうか…。

おすすめは#Filterの4マーク目(Aeropressの2つ前)。均一性も高く、ハンドドリップに最適な中細挽きとなる。
 この挽き具合で淹れるハンドドリップはとても美味しかった

エスプレッソは本当にだめなの?

グラインドレンジの広い電動コーヒーグラインダーを選択する際に、エスプレッソ挽きが可能かどうかは商品選択の分かれ道になる人も多いだろう。

敢えてエスプレッソではなく「Mocca モカ」と挽き目を記載しているところからエスプレッソは対象外と思われるが一応試してみた。使用したのは家庭用ではかなりの本格エスプレッソマシンであるascaso Dream PID

やはりエスプレッソとしてはクレマ(茶色い泡の層)が足りない。しかしながら、チェーン店のエスプレッソよりは格段に美味しいし、モカエキスプレスではなくエスプレッソとして濃度も凝縮感も含めて成り立っている

マキネッタのビアレッティを使用したモカエキスプレスでは十分楽しめる粒度域となっている。

クリーニングもとても簡単

ホッパーを外せばグラインド刃も簡単に取り出せて隅々まで清掃ができる。ホッパーを外しているときは、電源が入っていても刃が回転しないように事故防止機能が付いているのも安心する。

 

分解が簡単だからこそ、クリーニングも面倒にならずにいつも清潔に保っておけるのは大切なポイント。ディスク刃もこのとおり清掃がしやすい。

 

ウィークポイントについて

商品の改善すべきポイントとして真っ先に感じたのは、明らかに安物感を感じる粉受け。薄くて耐久性が無く、静電気も発生しやすい。加えて粉を移す際の使い勝手も悪いときたものだ。VARIO-Vの粉受けと比較すると大きな差を感じてしまう。

総評

例えるなら、ルックスが良くて(デザイン)、勉強もできて(性能)、スタイル抜群(コンパクト)、性格も良い(価格も安い)、と4拍子揃ったパーフェクトマシンといった感じ。

改善点もあるが、それを忘れさせるほどに『デザイン』が素晴らしい。

僕は冒頭でWilfa SVART aromaを否定的だと言ったが、お詫びして訂正したい。嫌いなのは、現地で1万円台半ばで販売されているマシンを+1万円以上乗せて販売する輸入業者が嫌いだ。これだけのグラインダーが1万円半ばで購入できる地域が心底羨ましい。

もう一度言おう、1万円台半ばのマシンであれば非の打ち所が無い。だが3万円弱では比較対象が多数出てきてしまうけれど。。

デザイン性と性能を両立させるWilfa(ウィルファ)社のコーヒー器具について、今後も目が離せない。
 欧州の人が本当に羨ましいなあ。