家庭用最強!?ナイスカットミルから正統進化した最新版KalitaナイスカットGの実力を徹底レビュー

念願のコーヒーグラインダーが手に入った。

僕がこのコーヒーの沼にどっぷりと嵌り始めた頃、性能の良い家庭用コーヒーグラインダーといえば誰もが口を揃えて「カリタ ナイスカットミル」と答えたものだ。

当時グラインダーの重要性に無知だった僕は、「コーヒー豆をバラすだけなのに2万円弱(当時)の価格を出して、大きな電動グラインダーを買う必要ないだろ」と、コンパクトでスマートなラッセルホブスのプロペラ式の電動ミルを購入したのだった。

その後いくつものコーヒーグラインダーと珈琲時間をともにしてきたが、ナイスカットミルを扱う機会は無かった。僕とは縁の無い器具だと感じていた。しかし、あれから7年。そんなKalitaナイスカットミルから正統進化を続けたナイスカットGがついに我が家にやってきた。

新 Kalita Nice Cut G

製品仕様

本体サイズ㎜ : 120(W)×218(D)×337(H)
本体重量   : 2.3kg
原産国    : 日本(日本専用)
容量     : 50g
電源     : 100V 50/60Hz
消費電力   : 120W
粉砕能力   : 100g(毎分)
付属品    : 蓋・ホッパー・受缶・ブラシ

2016年に生産終了となった『ナイスカットミル』の後継機として翌年『ナイスカットG』が発売された。当時、惜しまれながらとはいわれていたが、その頃には海外の家庭用高性能グラインダーが席巻する直前であり、当時のデザインでは限界がきていた頃でもあったうようだ。

その証拠にKalitaは、間髪入れずに次のナイスカットG、ネクストGといった性能とデザイン、ロゴ等を刷新した新しいモデルのグラインダーを市場へ投入する。

1984年に発売された前身のナイスカットミルは家庭用としては抜群の完成度であった。そのため、その姿かたちを大きく変えること無く、2016年の生産終了まで人気を誇り続けた。

マイナーチェンジを続け、現代のトレンドに合ったグラインダーへと正統進化を辿ったナイスカットGの実力を検証していこう。

ナイスカットG(2017モデル)との違いは?

2020年最新版のナイスカットGではスイッチが正面に配置された。大きな変更点はこれだけ。

カラー展開はプレミアムブラウンとインディアンレッドの2色展開とした。僕が購入した写真のカラーは蔦屋家電で限定販売されているカリタ ブラックのナイスカットG。
 さすが蔦屋家電。粉受け缶までブラックにするところあたり、黒好きにはたまらないね。

フラット刃カット式

刃は名機と呼ばれたナイスカットミルから変更はなく、サビに強く切れ味が落ちにくいモリブデン鋼を使用。刃の表面は炭素コーティングによる硬化がされており耐久性にも優れた刃に仕上がっている。

もちろんナイスカットミル専用の替刃も使用可能だ。この価格であれば1セットは持っておきたい。

ナイスカットG替え刃  click 

電動グラインダーの種類
・コニカル刃・コーン式…立体的な螺旋形状。円錐形。フラット刃よりも低速な回転で豆を擦り潰すように砕く。回転数が低いため騒音や熱の発生を抑えることが可能(VARIO、comandante他ハンドグラインダーのほぼ全て)

・フラット刃・カット式…平らな形状の上刃と下刃が高速回転して豆を切り刻むように挽くタイプ。近年では業務用の最上位モデルでもフラット刃が使用される機種が増えている(EK43やE80S、Mazzer majorなど)。断面が鋭利でフレーバーを感じやすい反面、回転速度が重要となるため強いモーターが必要で味を劣化させる摩擦熱が入りやすい。 

グラインド精度検証

挽き目はダイアルで#1〜#8まで粒度調節が可能。各目盛りは0.5段階の調節が可能なため15段階の粗さを選択できる。実用レベルなのは#6あたりまでだが、モカエキスプレス〜フレンチプレスまでしっかりと対応。

特にハンドドリップで多用する【#2 #2.5 #3 #3.5】に照準を合わせて作られており、この粒度帯の充実度は流石といったところ。では実際のメッシュを見ていこう。

【#1 細挽き モカエキスプレス】

【#2 中細挽き ハンドドリップ(濃いめ)】

【#2.5 中細挽き ハンドドリップ】

【#3 中細挽き ハンドドリップ(クリア)】

【#3.5 中挽き ハンドドリップ、デルター、エアロプレス】

【#4 中挽き ネルドリップ、サイフォン、水出し】

【#5 中粗挽き フレンチプレス、ステンレスフィルター】

【#6 粗挽き フレンチプレス、パーコレーター】

少し微粉は見られるが、どのダイアルも十分な均一性ではないだろうか。エスプレッソ挽き(極細挽き)こそ非対応だが、オールラウンダーよりも、得意な粒度帯があるほうが個人的には使い勝手が良いと思う。

微粉量チェック

試験用のふるい(250μm)を用いて微粉量測定も実施。10gのコーヒー豆をグラインド後、ふるいに1分かけて微粉をセパレートし測定。粉の粗さはハンドドリップのメッシュ中細挽き#3.5を使用。


10gあたりの微粉量は0.7gであった(250μm)

それなりに微粉は落ちている。グラインド精度、微粉量の少なさはみるっこやコマンダンテには及ばないものの、十分に優秀だ。また微粉だけでなく、拡大してみると下の画像のように均一性の高さがよく分かる。

 

粉の飛び散りは?静電気問題は?

今回、ここまでの様々なテスト挽きをして、粉受けの外に出たのは上の写真のとおり。旧ナイスカットミル、ひとつ前のナイスカットGでは粉の飛散については批判的な声が上がることが多かった。

2020年新型のナイスカットGでは粉受け缶がグラインド排出口により近づいたためなのか、飛び散りは殆どみられなかった。

それなりに静電気は発生するが、このくらいは許容の範囲だろう。FUJIROYALのみるっこと比較すると静電気はかなり少ない。KalitaネクストGのように静電気除去システムは無いが、フラットディスク刃の回転速度を重視したためと思われる。

下の画像はみるっこの静電気。強力なグラインドパワーと回転速度を得るための副作用が、粉の飛び散りと静電気問題につながる。特にフラットディスク刃のグラインダーの場合は、その点が強調される。

 

グラインド音量(デジベル比較)

騒音器を使用して10gグラインド中の最大音量を計測。結果は上の画像のとおり95.8dBAという音量であった。セミの鳴き声(2m)が約70dBA、地下鉄の車内が80dBA程度、90dBA台だと犬の鳴き声や、カラオケ店内などが相当する。

静音性を強調している割には、かなり音は大きい。実際は10g程度のグラインドであれば10秒程度で挽いてしまうので、体感としては上記に示したような騒音例ほどには感じないが、静音ではないだろう。

同じテストをみるっこで実施してみたところ、82.5dBAという結果だった。13dBAの差であるが比較すると明らかに音量は小さい。加えてみるっこの場合はグラインド時間が10gあたり3秒ほどなので、より騒音に感じづらい。

 

Kalita NEXT Gとの比較

これは特に気になっている人も多いだろう。得意とするグラインド帯も同じため、同時期に発売されたこの2機種両方を所有することはまず無い。実際にどの程度性能差あるのかなど具体的に並べて比較されることが無いのだ。

結論からいうと、グラインド精度で選ぶならナイスカットG、使いやすさで選ぶならばネクストGだろう。最も大きな違いはグラインダーの刃の材質と回転速度だ。

ナイスカットGの刃は業務用グラインダー同様にステンレス鋼で、フラットディスクのカット式をより活かすべく挟み込み切るための材質と形状にしている。

それに対してネクストGではセラミック刃を使用しており、摩耗が少なく熱の発生を抑えることを重視している。画像を比較すると一目瞭然だが、ステンレス鋼とセラミック刃では鋭利さ全く異なる。


(水洗いもできるセラミック刃だが粉の汚れが目立つ)

グラインドした豆の精度を比較すると、どのグラインド帯もナイスカットGの方が断然優れておりフレーバーも良い。刃の材質を考えれば当然の結果だろう。

一方でネクストGのグラインダーは一回り大きく、ホッパーもスタイリッシュ。デザイン性の良い受け缶に、粉の飛散が全く無い静電気除去装置の搭載、2重台座にホッパー下部の豆ストッパーなど、家庭用ならではの使い勝手にこだわった製品となっている。

どちらか一方を選べと言われたら僕は迷いなくKalita ナイスカットGを選ぶ。コーヒーグラインダーには精度を求めたいし、コーヒーを淹れたときの美味しさを求めたい。

業務用のフラットディスク刃のグラインダーにセラミック素材を採用しているところが無いのは、鋭利な刃によるカットした断面を作ることを重要視しているからだ。家庭用の使いまわしを重視するのも大事だが、低速+セラミック刃ではナイスカットGのようなコーヒーの美味しさを引き出すのは難しい。

その他で気に入ったところ

前面スイッチは便利

分解清掃もそこまで大変ではない

マイナスドライバーで簡単にミル刃までアクセスできるので定期的なメンテナンスも簡単。品質の良いブラシまでついてくるのも嬉しいところ。

ホッパーの取っ手がお洒落で持ちやすい

地味なところかもしれないが、こういう細部に至るデザイン性と使い心地を大事にしているところも評価できる。

 

Kalita Black (カリタブラック)がかっこよすぎる

なんといっても黒好きにはたまらない蔦屋家電限定バージョン。継ぎ目や部品なども黒で統一されており、受け缶までブラック仕様にするこだわり。しかもこの受け缶の質が驚くほどよい。

限定カラーだし、これだけで+1万円くらい払っても良いところだが、なぜか旧2017モデル価格据え置きにしているためブラウンやレッドのカラーよりも価格が安いという謎の状態に。ブラックで検討中の方は価格が上がる前にチェックしておくと良いだろう。

↓現在下記Yahoo!でのみKalitaブラックが販売中

 

総評・まとめ

最新版ナイスカットG。フルモデルチェンジが行われた訳でなく、マイナーチェンジではあるものの消費者の声と社内研究を重ねた努力が正統進化として新機種へ随所に盛り込まれている。

特に近年のカリタ社はキッチンに置きたくなるようなインテリアの一部やデザイン性を追求した商品が多く、新商品が楽しみになっている

かつて僕もそうであったが、「マニアックな性能よりもまずは自分好みのお洒落なデザインから入りたい」というコーヒー好きの人は多い。性別問わず道具から所有欲を満たしてくれるようなコーヒーの愉しみ方を提供しているのがとても好感できる。

一方で課題も多い。超高性能でコンパクトなハンドグラインダーは海外から魅力的な商品が多く開発されている。これからもそのトレンドは加速していくだろう。更に、家庭用電動グラインダー市場にもより安価で高性能なプロ顔負けのグラインダーも投入され始めている。

1984年に誕生したナイスカットミルの成功体験から離れ、殻を破れるかが今後の成長の鍵となるのは間違いなさそうだ。家庭用グラインダー市場のリーディング企業としてナイスカットミルを超える名機の誕生を再び期待したい。

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