レジェンド級の評価 Panasonic NC-A56 vs Kalita NEXT G × ハンドドリップ

Panasonic NC-A56 コーヒーメーカーとは

以下がAmazonの評価(2019/02/11時点)であるが、とてつもないレビュー数だ。そして圧倒的な評価。ここ最近ブームとなっているコーヒーミルとドリップの一体型(全自動タイプ)である。

正直、コーヒーメーカーがどこまで進化しようと所詮機械であることに変わりは無いし、ハンドドリップ派の僕とは交わることのないマシンである。

と思って興味も無かったのだが、このレビュー数と評価は気にならずにはいられなかった。驚いたのは2014年10月に発売されており、現在も売れまくっている大ヒット商品なのだ。コーヒーメーカーでこんなにまで評価されている機器を僕は見たことが無い。一体どれだけ凄いのか…

コーヒーメーカー派とハンドドリップ派との相容れないニーズ

気になってネットを調べてみても、期待する情報は手に入らなかった。豆からドリップする全自動コーヒーメーカーの各社比較レビューや、Panasonic NC-A56の機能詳細レビュー情報は溢れていたが、僕が知りたい

『コーヒーグラインダー × ハンドドリップのこだわりの一杯にどれだけ近づいているのか?』

に対する答えは見つからなかった。考えてみれば当然。高価なグラインダーを使用しているホームバリスタが、従前の考え方で言えばステップダウンに値する一体型のマシンを購入する事は皆無だろう。ハンドドリップの手間を含めてコーヒーを愉しむ人たちはこの商品のターゲットでは無いのだ。

だからこそ知りたかった。これだけの高評価マシンの実力を。全自動コーヒーメーカーのレジェンドとなっているPanasonic NC-A56と僕のKalita NEXT G × ハンドドリップで淹れたコーヒーを徹底比較してみた。

全自動コーヒーメーカーのグラインド能力

コーヒーを生業とするプロに「全自動コーヒーメーカーにとって、コーヒーを美味しく淹れるために最も重要なポイントは?」と尋ねたら、10人に聞けば10人全員が答えるのが“ミルの性能”だろう。

それ程までにコーヒーにとってミル(グラインダー)は重要。僕の知り合いのバリスタの多くは、仕事が休みの日に人気のコーヒー店で豆を購入する際は”豆のまま”ではなく”粉にしてもらう”という。その理由は、自宅にある家庭用コーヒーミルで豆から飲むよりも、店舗の高性能グラインダー(EK43)で挽いてもらってきた粉から抽出した方が1週間以内であれば美味しく飲める。というのが理由。

鮮度が命のコーヒー豆は断面を空気に触れさせないことが大事。お店で粉にしてもらうのは素人がやること。玄人は豆で購入するのが当たり前。という考え方の真逆を行くものだ。それ程までにグラインダー性能とは美味しいコーヒーの抽出に欠かせないのである。

このマシンにとっても例外ではなく、味の8割以上を決めるのがグラインダーの精度といっても決して言い過ぎでは無いだろう

挽き目調節(粗挽き&中細挽き)

粗さの異なるメッシュフィルターが付属されており、好みで粗さを変更できるというもの。グラインダー本体の精度調節に依存するのではなく、グラインド粒度にバラツキがあってもメッシュで捕捉しようというものだ。

Panasonicの開発陣の中にコーヒーを分かっている人がいるなと思うのは”中細挽き”の挽目をスタンダードにしたこと。説明書では素人向けにわざわざ中細挽き(ふつう)と記載。僕らからすると”ふつう”の表記は笑ってしまうものだが、詳しく無い人が2種類のメッシュで悩む人へ、こちらが標準という意味で使用してるのだろう。

『ふつう と 薄め(酸味)』などと表示すれば誰が見てもわかり易いところを、敢えて『中細挽き と 粗挽き』としたところに開発者のこだわりを感じた。

挽き具合を検証

拡大

拡大すると粒度のバラツキが目立つ。粒に微粉がたくさん付着しているのが分かる。中細挽きと粗挽きの違いは目視では確認しづらい。グラインド時間は同一のため、様々な粒度で挽かれた粉をメッシュの粗さで通過・非通過を決めているだけ。粗挽きのグラインドを揃えているのではなく、つまり♯粗挽きの中には粗挽き以下、中細挽も含まれてしまう

反対に♯中細挽きメッシュは粗挽きを通さないため、本来狙ったコーヒー豆の分量以下の抽出となってしまい毎回味にブレが生じてしまう。上記2つは個人的にはかなりのマイナスポイントだ。

微粉量チェック Panasonic NC-A56 vs Kalita NEXT G

想像以上に微粉が多い。同じカット式の専用グラインダーKalita NEXT Gと比較すると、1杯分とされる8.5gあたりの微粉量は3倍の結果に。カット式は本来微粉が少なく、カット時間が短いのが特徴。

Panasonic は刃の精度が悪いのか、構造上の問題なのだろうか。これでは味への悪影響は避けられない。

飲み比べ(粗挽き、中細挽き、Kalita NEXT G × ハンドドリップ)

スペシャルティコーヒーを美味しく味わえるマシンとのことであったので、酸味と果実感の強い”エチオピア・コンガ・ナチュラル(浅煎り)”を使用。設定は【マイルド、ストレート(酸味調節なし)】でテスト。

#中細挽き と #粗挽き

意外だったのはこの2つの味の違い。前述のとおり目視では挽目の違いを感じることはできなかったが、味は明確に異なっていた粗挽きはあっさり、中細挽きは粗挽きよりはしっかりした印象。抽出されたコーヒーの色からも違いが分かる。間違いなくメッシュによる味の変化を楽しめる点でこれはGOODポイント

肝心のフルーティーな酸味、総合的な美味しさについては残念な結果となった。スペシャルティコーヒーの持つポテンシャルを殆ど活かすことが出来ていない印象。両挽き目ともに味はボヤけており、酸味は損なわれ、果実感はほぼ消失していた。予想したとおり微粉による雑味が発生してしまっていた。

今回は浅煎りのエチオピア・コンガのため、苦味は出なかったが銘柄と焙煎度によっては微粉から苦味も生じることだろう。

Kalita NEXT G × ハンドドリップ

Kalita NEXT G の#3でグラインドした中細挽き豆を同じくKalitaウェーブにて抽出。誰でも分かるほどフレーバーが違う。口に含んだ際のベリー系の果実感に飲み終わったあとのジャスミンのような香りの持続。

コンガ・ナチュラルの特徴が見事に抽出されている。ここまで違いが出るかといった感じ。

 

その他 気になったところ

《Bad》グラインド音の大きさ

かなり大きい。集合住宅の夜中や、家族みんなが寝ている朝などは騒音認定されるレベル。AVG82dbは電車の車内といった騒音レベル。実際に使用者のコメントでも夜は使えないとの意見も散見される。

 

《Good》抽出までの時間

今回1杯分で掛かった時間は5分半。こちらは賛否あると思うが、湯を沸騰させる時間も含めると全自動では優秀かと。グラインドから抽出、グラインダーの洗浄まで全自動なのは本当に楽。

《Good》活性炭フィルター

この機種は非常においしい水からつくるコーヒーを意識されており、ヒーターを通して沸騰させたお湯を活性炭フィルターに通すことでカルキを90%以上カットする”沸騰浄水”機能を搭載。

普段ヤカンで湯を沸かすときにはカルキを抜くために沸騰後、数分は湯気を出しておくことが日課となっているが、こういった細かなこだわりが多くの検討中の人の背中を押すのだろう。

《Bad》蒸らし機能

抽出コースには【マイルド】と【リッチ】の2種類から選択可能。違いは蒸らし時間による差で、マイルドは通常の蒸らし時間なのに対してリッチは+1分程度蒸らす。

これは本当に不要な機能。好みに応じた味の選択肢を増やしたい気持ちは十分理解できるが、蒸らしを1分以上やってしまえば雑味やエグみを多く発生させる原因になる。これだけハンドドリップを意識したマシンになぜこの機能が付いてしまったのが理解し難い。

僕が開発者なら迷わず豆の量or抽出方法で本格的なマイルドとリッチを提供しようと考える。

Panasonicは多忙なトップ焙煎士やワールドバリスタチャンピオンでなくて構わないので、一般的な知識のあるバリスタ数名に意見を求めた方がよっぽど良い機種が完成すると思う。

 

総合評点


以上を踏まえた総合評点は…

65点 

である。レジェンドと称されるPanasonic NC-A56への評価としては多くの反感を買いそうな気もするが、全自動、一体型であるが故の弱みが出てしまったことが点数の理由

総合的なバランスを重視することは大事なことであるが、おいしいコーヒーをつくる上での注力すべき比重をもう少し考える必要がある。全自動コーヒーメーカーにとって味の8割をコーヒーグラインダーの精度が決めるのであれば、本機器のグラインダーへのこだわりは極めて弱い

この微粉量ではスペシャルティコーヒーのポテンシャルを引きだした一杯の抽出は難しいだろう。


NC-A56の美味しい飲み方

僕が考えるベストな抽出レシピをご紹介

  1. コーヒー豆を10g用意
  2. Kalita NEXT G にて#3の挽目でグランド
  3. 水容器タンクに150g注水
  4. ペーパーフィルターへ粉を移す
  5. マイルドコース設定
  6. 粉ボタンをPush
  7. 全自動で出来上がり

※豆の量は標準では少ないので増量(8g程度⇒10g)


全自動コーヒーメーカーがあるのに、そのグラインダーは使用せずKalita NEXT Gで挽いた豆から抽出するという贅沢使い。豆は説明書よりも多めで、水は少なめで抽出。浅煎りでも深煎り豆でも非常にバランスの良い、香りの良い1杯が味わえるオススメのレシピ。

まとめ


photo by [Rafael Saldaña]

ホームバリスタのこだわりの一杯にはまだまだ遠いが、改善点を克服していけば遠くない将来、人と機械が淹れるコーヒーの差は無くなっていくと感じた。

何よりも便利で簡単。全自動&オールインワンの良さはコーヒーを本格的に豆から始めたいという人の門戸を広げるきっかけになっている。発売後、これまでに缶コーヒーやスティックコーヒー、パックコーヒー等で満足していた人たちをどれだけ感動させただろうか。

挽きたての豆から抽出する贅沢を、大衆向けの身近なものにした功績は大きい。それだけに進化を期待したい。様々な味を楽しめる機能も大切であるが、まずはコーヒーグラインダーを見直すべき。価格的に難しいのであれば、PROモデルと題してプラス1万円上乗せしてでも高い精度を求めるべきだ。

グラインドから抽出まで空気との接触を抑えた一体型の動線はコーヒー抽出の理想形だ。家庭用でのこれは完全な優位性となる。Panasonicの全自動コーヒーメーカーが、これからも多くのコーヒーラブァーのCoffee Lifeを豊かにする架け橋となることを心から期待している。

 

レジェンド級コーヒーメーカー NC-A56 click 

NC-A57 デカフェモデル
なお、NC-A56 の後継機として2018年9月NC-A57 デカフェ(カフェインレス)が販売中。こちらは近年、世界的に注目度の高まっているデカフェ豆の専用モードを搭載している。

デカフェモデルPanasonic  NC-A57 click 

ROASTといい、デカフェといい、本当によくコーヒートレンドをキャッチした商品開発をしている。Panasonicの今後の新製品にも注目したい。

 

比較に使用したハンドドリップツール

kalita 燕三条 銅製ドリッパー click 
kalita コーヒーサーバー click 
kalita ウェーブ コーヒーフィルター click 
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