acaiaも真っ青?ベートーベンが使用していたコーヒースケールが秀逸だった話

バリスタがこぞって愛用する、評判の良いコーヒースケールといえばacaiaが有名だろう。小型化、軽量化、高機能化が進む中で、各社も次々とクールな新型スケールを開発している。

そんな日進月歩していくコーヒー器具の中で、いまから約二百年前の欧州オーストリアのウィーン。音楽史では最高の作曲家とさえ評されるべートーベンが現代のスケールよりも遥かに小さく、軽く、自由なコーヒースケールを使用していたというのだ。

acaia pearl(アカイア パール) 最高のスケール click 
acaia lunar(アカイア ルナー) 小型タイプ click 

ベートーベンとコーヒー

ベートーベンといえば『運命』や『第九』、『エリーゼのために』などクラシックに興味が無い人でも必ず1度は耳にしたことのある代表曲を数多く残した。

その一方であまり知られていないが、無類のコーヒー好きだったそう。異様なまでにこだわりの強いベートーベンは1杯の理想のコーヒーをつくるため、豆選び、挽き方、スケール方法を追求。まるで楽曲制作をするように。

個人的な主観でしか無いが、現代においても優秀な焙煎士にはこういった職人(研究者)気質の人がとても多いように思う。料理人や、デザイナー、伝統工芸、などの経歴からコーヒーの世界に飛び込み、終わらない理想の味の探求を続けている人達を何人か知っている

ベートーベンのこだわりのスケール方法とはどんなものだったのだろうか?

1杯60粒のコーヒー論

19世紀前半のウィーンでは欧州のコーヒー文化発信地とされるほど、人々の生活にコーヒーが定着。イエメン産のアラビカ種コーヒー豆がトルコとの交易にてウィーンに運び込まれていた。

ベートーベンは豆選びにこだわり、挽き方にこだわった結果、当時電子スケールなど無い時代に理想のコーヒーを淹れるには1杯60粒のコーヒー豆が最良の味になるとの結論を出したそうだ。毎朝必ずきっちり60粒を数えて1杯のコーヒーを丁寧に淹れたそう。1粒、2粒でさえも決して間違えることの無いように重要な仕事をするかの如く。

これは大変興味深い話。電子スケールが常用となった現代ではコーヒー豆を計る方法に、それ以外を考える余地など全く無かった。それは裏を返せば電子スケールが無ければ何も出来ないということ。もしコーヒーLoverのあなたが、野外でコーヒーを作ろうとしたときにコーヒースケールを忘れてしまったらどうするだろうか?自宅の唯一のスケールが故障してしまったら?

このベートーベン式スケール法を用いれば、そんな緊急時もコーヒーを淹れることが可能となる。

実際に60粒のコーヒー豆を計測してみた

ベートーベンが毎朝飲んだ60粒


60粒=8.7g という結果になった。

この数値を元に考えると

1g-7粒  5g-34粒  8.7g-60粒  10g-69粒
15g-138粒

となり、あとは上記粒数に対するgを覚えておけば、どこでも使える最軽量で自由なコーヒースケールとなる。僕の場合は毎朝10gで150g抽出をしているので試しに5度にわたり69粒で計測してみたが、いずれも10g±0.2gの範囲に収まっており、非常に優秀なスケール法であることがわかった。

混在するコーヒー豆個体の大小の差も平均値に寄っていくため、均一な計量を可能にさせるのだろう。

史実に記載されていない推測

また、これは史実には残されていない僕なりの推測であるが、確信に近い推測でもある。この『ベートーベン式60粒計量法』はコーヒーを美味しくする最大の利点をもたらしていた。それは、ハンドピックである

今でこそ、コーヒー豆のハンドピックは当然の作業のようになっているが、当時のイエメン-オーストリアへの流通において出荷時、焙煎前、焙煎後のハンドピックを現代レベルで行っていた可能性は皆無である。

当時のコーヒーは精製処理はナチュラル製法によるものであったため(現在もイエメンはナチュラル製法)欠点豆の混入量はかなりのものであったと予想される。

几帳面でこだりの強いベートーベンのことだ。1粒のズレも許さない彼が、60粒の計量時に目の前に並んだ欠点豆を見逃すはずが無い。彼は本当に美味しいモカコーヒーを味わっていたのだろう。

モカコーヒーについて余談

因みに横道にそれるが、イエメンは世界で最も古いコーヒー文化を持ち、世界で初めて商業目的でコーヒー豆の輸出を行った国である。

17世紀頃からヨーロッパ各地へコーヒー輸出がされており、CoffeeLoverなら飲んだことのあるであろう各種銘柄『モカ』はイエメン共和国にある港町モカに由来する。19世紀前半にはイギリス・フランス・オランダはモカに工場を持ちコーヒー輸出を行っていた。

コーヒの起源とされるコーヒーノキが初めて発見され栽培されたエチオピアは紅海を挟んだ対岸の国。

どちらの国の豆も原種が同じため果実感の溢れる酸味と、チョコレート風味のビター感が特徴。特に酸味は飲み終わったあとも長時間、口の中にフルーティーな香りが残るほど。

昨今のスペシャルティコーヒーの代表とされるエチオピア・モカ・イルガチェフェも『モカ』より輸出されていたコーヒー豆。イエメン産は”モカ・マタリ”と呼ばれ、エチオピア産のモカ・シダモ、モカ・ハラーなどとは区別されていた。

『ベートーベン式60粒計量法』のデメリット

皆さん気がついていると思うが最大のデメリットは、豆の産地(品種)が変わったときである。コーヒー豆といっても生産国や標高によって、小粒なものから、大粒なものまで様々。1粒あたりの重さも同じものは無い。もっと言ってしまえば収穫年によっても異なる。

試しに先程使用した「コロンビア ウィラ スウィート」を同じコロンビアでも粒の大きい「コロンビアスプレモ」に変えて計量してみた。

結果は上の画像のとおり60粒=10.5gとなってしまった。コロンビア ウィラ スウィート比で+1.8gである。当時はパーコレーターやサイフォンが主流であったが、これで同じ抽出を行ってしまっては味が全く違ってきてしまう。

おそらくベートーベンの時代は産地がモカ港から運ばれてくるイエメン・エチオピア産のものに限定されていたためコーヒー豆の大きさの違いが少なかったのだろう。あるいは、こだわり派のベートーベンは数種類のモカ産地ごとに湯量を変えていたのかもしれない。

終わりに


photo by Eric Montfort

天才音楽家ベートーベンが世に生み出した楽曲の数々は意外にも毎朝のコーヒーが調律していたのかもしれない。

『エグゼクティブは自分自身の心を調律する術を持っている』という話を有名な社長から直接聞いたことがある。スティーブジョブスの瞑想や、安倍首相&トランプ大統領のゴルフ(一応笑うところでは無いですよ)、旅行やドライブ、映画鑑賞から音楽を聴くこと。コーヒーもきっとそんな一面を持っているのだろう。

モカコーヒーを入手したときにはぜひ一度、ベートーベン交響曲第6番(田園)の優雅で柔らかい音楽を聴きながらベートーベン式60粒計量法を使って飲んでもらいたい。きっとモカコーヒーの芳醇なフルーティーな酸味の向こう側にベートーベンの愛して止まなかったコーヒーの旋律を感じることができるはず。

zassenhausハバナ 通称ベートーベンミル click 
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