これからハンドドリップを始める人におすすめのコーヒードリッパー教えます

コーヒーを少し本格的に始めてみようと思ったときにまず悩むのがコーヒードリッパー。種類が多く、その特徴について各ドリッパーの説明を読んでいると何だか難しそうに感じて躊躇してしまう人もいるだろう。

今回はコーヒードリッパーについて特徴を分かりやすく比較すると同時に、あなたにぴったりのコーヒードリッパーを紹介したいと思う。

 

各コーヒードリッパーと味の違い

各社より様々な工夫を凝らしたドリッパーが販売されているが、そもそも誤解を恐れず言わせてもらうと

そこまで大きく変わらないよ

と僕は思っている。もっと分かりやすくいうと、これから初めて自宅でハンドドリップで淹れるコーヒーを楽しもうとする人にとって、最初から各ドリッパーの味の違いが分かる人って少ないんじゃないかな。

コーヒーマニアの人やコーヒーショップの店員さんですら、上の写真の6つのドリッパーで別々に淹れたコーヒーの味をそれぞれ正確に見分けれれる人なんてそう多く無いと思う
 「余裕で全部分かるよ」って方にはごめんなさい

 

要するにざっくりとした好みでいいんです。「深め」「濃いめ」「あっさり」「スッキリ」「クリーン」「苦い」「苦くない」とかね。淹れ方なんて最初は気にする必要なし。それよりもコーヒーの味には豆の品質(クオリティ)や焙煎度(ロースト加減)や粉にするときの挽き具合の方がよっぽど影響するんだから。

複雑に考えずに、取り敢えずざっくりとした好みで購入して淹れてみよう。自宅でハンドドリップが淹れられる環境が整えば、そこには至福のコーヒータイムが待っている。使っていれば器具にも愛着が湧くものだ。

7種類のコーヒードリッパーの特徴

ということで、僕が普段よく使用しているコーヒードリッパーの特徴をざっくりと7つご紹介。繰り返しになるが「使いこなせない難易度の高いドリッパーを選んでしまったらどうしよう」とか「自分の好みと正反対のドリッパーを購入してしまったら」なんて考えなくてよい。

もう少し深めに抽出できるドリッパーにすれば良かったと思うのであれば、焙煎度をいつもより強いものを選んでみたり粉に挽くときの粗さをより細かくすれば良い。慣れてくれば、お湯を注ぐスピードでも苦味や酸味をコントロールできるようになるからだ。

HARIO(ハリオ)V60
【すっきり】【あっさりとした】【クリーン】

 上から覗き込むとスパイラルリブが芸術的に美しい

世界で最も有名かつ使用されているコーヒードリッパー。いまでは世界中の75カ国以上で愛用されているというのだから、日本が誇るMADE IN JAPANのコーヒードリッパーだ。

  • スパイラルリブ
  • 円錐形(角度60°)
  • 大きな一つ穴

その人気の秘訣を支えるのは3つの特長。V60の代名詞ともいえる「ひねり」を加えたスパイラルリブは紙とドリッパーとの密着を防ぎ空気が抜けることでコーヒー粉がしっかり膨らむ。

 

円錐形は台形のドリッパーと比較して縦にコーヒー粉の層が厚くなるなるため湯がより多くの粉に触れながら落ちていくことが可能に。同時に大きな一つ穴が過抽出を防ぎ、スパイラルリブ構造と相まってスムーズな抽出を促す。

(円錐の先端までリブが入っており、湯が通り抜けやすくなっているのが分かる)

HARIO V60は抽出速度が早く、基本的にはクリアな質感の、あっさりとしたコーヒー抽出に向いている。昨今のサードウェーブで最も支持された理由だろう。 焙煎度と豆の挽き具合や湯の淹れ方の加減で濃いとろみのある抽出も可能だが、雑味を出さないための多少のテクニックが必要となるため、やはりクリアな味わいに向いている。

ORIGAMI(オリガミ)ドリッパー
【すっきり】【さらっとした】【軽い】

(HARIO V60よりも角度は緩やか。速すぎず、でも確実に安定した速度で湯を抜くことを計算された作り)

20本のビダ(縦溝)が折り紙のように見えるネーミングセンス抜群のドリッパー。また色鮮やかなカラーラインナップを取り揃える。溝がしっかりと入っているのでお湯の抜けが良く、抽出速度はV60 よりも早いため非常にスッキリとした抽出に向いている。

おしゃれなドリッパーでありながらも作りは岐阜県の美濃で職人が手作りしている美濃焼と呼ばれる陶磁器。陶器と比較するとガラス化する成分量が多く美しい輝きを帯びる。

 

円錐形ペーパーフィルターとカリタウェーブフィルターの両方が使用できる。カリタウェーブのフィルターではビダの数を一致させてぴったりフィットするように設計。

 

(大きな一つ穴もHARIOと同じであるが、ORIGAMIはより大きい)

すっきりとしたフレーバーが好きな方には向いている。一方でHARIOよりも抽出時間が短くなりやすいため、軽い味以外のコントロールが少し難しい面もあり。雑味は出づらい反面、未抽出となり味がボヤケてしまったり、パンチが無くなってしまうと感じた場合に、湯の注ぎ方で解決するためのテクニックが必要になる。

自身の好みが酸味やクリーンさを重視した味なのかで、選び方が変わってきそう。

ORIGAMI(オリガミ)ドリッパー
ORIGAMI 公式HP
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KONO(コーノ)名門ドリッパー
【深め】【しっかり】【まろやか】

大正14年創業の珈琲サイフオン株式会社が開発した元祖円錐形ドリッパーのKONO。国内でもプロ・アマ問わず根強くファンの多い器具。コーヒー器具が日進月歩をしていく中で常に第一線で活躍し続けている。

 

ご覧のとおりドリッパーのリブが下から1/3ほどの長さ(短さ)となっているのが特長。前述したとおり、リブはフィルターとの間に空間を作り湯が早く落ちるための通り道となる。

そのリブが短く少ないということは湯はゆっくりと流れるためコーヒー粉と湯の接触時間が長くなり、結果として深めの濃い味わいが抽出しやすくなる

(ドリッパーの穴はHARIOと比べると小さく、リブは穴の下まで伸びている)

コーノのドリッパーが玄人向けと言われるのは、このリブ構造を活かしリブの上部に一定量の湯が滞留するようにドリップする必要があるからだ。

湯量が常に少ないと下方のリブの効果が強まってしまい湯の流れる速度が早すぎてしまう。ポタポタと一定以上の湯量を意識して注湯することで上部ではコーヒーと湯をしっかりと馴染ませて、下部はリブを伝わって過抽出となる前にコーヒーを流せる。

また近年のスペシャルティコーヒーではドリップ時に浮く泡や最後の一滴まで落としても雑味が出ないクオリティの非常に高い豆も増えているが、一般的な豆による抽出時はそれらを落とさないことが雑味を出さないポイントとなる。KONOはリブの無い上部の透過速度が遅いため、最後に残る雑味をしっかりとカットすることが可能。

初心者向けでないように解説されていることも多々見受けるが、上記を意識して慣れてしまえばさほど難しく無い。風味の特徴は湯との接触時間が長いため少しとろみのあるコーヒーの味をしっかりと抽出できるが、舌触りはまろやか。ドリッパーの下部でリブによる抽出速度があがるため苦味が抑えられる。喫茶店のコーヒーが好きな人には向いているだろうし、それ以上に美味しいコーヒーは簡単に作れるだろう。

RIVERS(リバーズ)ケイブリバーシブル
A面【バランスの良い】/B面【クリーン】

リバーズが開発したリバーシブル(AB両面)で使用可能なコーヒードリッパー。材質が柔らかいシリコーンゴム製のため簡単に裏返して、その日の気分やコーヒー豆の特性に合わせて2種類のドリッパーを愉しめる。

  • シリコーン製 リバーシブル使用
  • 鋭角な円錐形(角度50°)
  • A面:抽出速度が緩やか 
  • B面:抽出速度がA面と比較すると多少速い

ここまで見てきたドリッパーの画像と比較すると分かるが、A面はKONO、B面はHARIO V60を参考にしたリブとなっている。当然だが全く同じではなく、抽出穴のサイズや、リブの長さ、ドリッパーの角度、スパイラルリブなどの根幹となる構造は異なる。


(穴はA面はリブが最後まで伸びておらず、B面はHARIO V60に似た形となっている)

コンセプトは面白く非常に好みだが、ラバー素材というのはドリッパーとして日常使いには不向きな感は否めない。冒頭の画像のようにホコリの付着などもしやすく、また熱伝導率も低いため、抽出するコーヒーの温度を保ちづらい

角度は50°と鋭角だが、リブの形状の違いからかHARIOほどの抽出速度は無い。そのためリバーシブルでの抽出速度の違いもそこまで大きく無いのは惜しいところ。しかしこのドリッパーの最大の魅力はアウトドアでの使用だろう。ゴム素材のため折り曲げても形状記憶されており、落としても割れの心配も無い。それでいてRIVERS(リバーズ)の製品はどれもミニマルで魅力的だ。

初めてのドリッパーとしてはアウトドア使用中心でない人にはおすすめしないが、ハンドドリップをキャンプなどでも楽しむための2つ目以降のドリッパーとしてお薦めしたい。

RIVERSコーヒードリッパー ケイブ リバーシブル
RIVERS(リバーズ)公式HP
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Beasty Coffee コーヒードリッパー
【ソフトな】【とろみのある】【甘み】


(溝は不均一だが美しく段差がつけられている)

Beastyというショップ名には似つかわしくないほど繊細に作り込まれたドリッパー。

素材は佐賀県有田で職人により手仕事にて作られた磁器。すなわち有田焼である。ドリッパーには『袴(はかま)』とされる銅メッキされた金属受け(スタンド)を設けており、美しい器具のアクセントとなっている。

手作業で作られた素材は結合部も品質の高さを非常に感じさせる滑らかさ。袴には四角い窓が空いており、抽出時の湯気を逃がし曇りや水滴を抑え、抽出状況もカップ上から目視できる。

 

この折り重なるリブ形状はコニカルブレード型リブと名付けられており、円を描きながらドリップされた湯がコーヒーを通して自然と溝にかかり優しくブレードを伝わり抜けていく。コーヒーの適切な抽出コントロールができるように緻密に設計されているのだ。


(手触りも良く、安っぽさが全くない)

そして更に特徴的なのは、画像では伝わりづらいがドリッパーの先が下へ伸びてから切れていて、リブ(溝)は伸びた穴の途中で意図的に終わらされている。これが意味するものは大きく、通常のHARIO等のドリッパーと比較すると、明らかに粉と湯の触れる時間が増加する。それも自然な速度調節で遅くしているのがポイントだ

こうして抽出されたコーヒーは、コーヒーの味をしっかりと残しつつ、とろみのある角の無い風味が出やすい。適度な苦味を残しつつも甘みも引き出せるのが特徴だ

これだけの性能の器具がどうして制作されたのかは、また別の機会にお話するとしてKONOよりも更に簡単に美味しいコーヒーが作れる。難点は価格だろう。初心者の人が最初に購入するドリッパーとしては敷居が高い。まずは大衆向けのドリッパーで経験を積んでから、ハンドドリップコーヒーの魅力に取り憑かれたらぜひ試してみるといい。

kalita(カリタ)式三つ穴ドリッパー
【バランスの良い】【しっかり】

家庭用を中心にコーヒーに関する様々な器具を販売するカリタの代表作であり、円錐形ドリッパーと比較されることの最も多い台形ドリッパー。コーヒーのことに詳しくない人でも一度は見たことがあるのでは無いだろうか。

その特長はカリタ式と呼ばれる3つ穴構造穴は3つあるが小さく注がれた湯が一定時間留まってから抽出されるようになっている。ハリオと比較するとドリッパー内で湯が滞留する時間が長く、抽出時間はゆっくりとなるためしっかりと味を出せる。

ドリッパーのコンセプトにあるのは誰でも簡単に失敗の無い(雑味が出づらい)コーヒーを作れることにあり、ハンドドリップのビギナーの人でもkalita式構造に誘導されるように安定した味を作りやすい。

Kalita(カリタ)ウェーブドリッパー
【バランスの良い】【苦くない】【まろやか】

カリタウェーブドリッパーは3つ穴式でありつつ、リブ(溝)が無いのが特長フィルターのヒダがリブの役割を果たし、抽出されたコーヒーは適度な接触でウェーブとドリッパーとの空間から抜けるため過抽出にならない。

ドリッパーの方だけではなくフィルターに仕掛けを施すあたりは非常に面白い発想だ。20個のウェーブと平らな底面は、円錐形のドリッパーが湯を下方へ通り抜けさせる際に段階的にコーヒーの旨味を抽出させていくのと異なり、底面で全体的に馴染ませて3つの穴から均一に抜いていく。

(水分を含んだウェーブフィルターはどこか幻想的な美しさを纏う)

「初心者からプロのバリスタまで…誰もが手軽にベストな味わいを」と謳うとおり、湯をかたよって注いでも底が平らなので均一に補正されて味にムラが少なく抽出できる。20個のウェーブの隙間にコーヒーの粉が入ることで、円錐形のフィルターと比較して粉とフィルターの接地面が1.45倍にも増加。台形型のkalita式ドリッパーよりも抜けがよく抽出の速度も一定に保ちやすい。

味はバランスの良いすっきりとした印象になる。HARIO V60と比較すると、抽出時間が長いため、程よくコーヒーらしさも感じられる。バランスが良いという言葉がぴったり合うドリッパーだろう。

(写真の銅製タイプは新潟県燕市で製造されているTSUBAME & Kalitaモデル)

実際に有名なコーヒーショップでも採用しているケースは多く、ショップが出したい味をどのバリスタが淹れても安定して淹れられるところも魅力なんだろうと思う。反面、ウェーブも台形もKalita式はある程度の時間湯溜まりができるので美味しくないコーヒー豆を淹れるとネガティブな味まで抽出されやすくなってしまうのは注意が必要。

磁器製やガラス製、銅製、金属製等、様々な素材のものが販売されている。価格の安いものもあるので素材やデザインの好みで選択できるのも嬉しいところ。


Kalitaウェーブコーヒードリッパー 銅製
Kalita(カリタ) 公式HP
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結局どれがおすすめなのか

ここまで読んでいただいた方であれば、きっと自分の好みのドリッパーが見つかったことだろう。まだ悩んでいるという人は、もう一度、各ドリッパーの表題をご覧になって欲しい。そして迷ったら安価なもので始めよう。HARIOのV60のプラスチックモデルなんて300円台で購入可能だ。

コスパ最強のHARIO V60 プラスチック  click 

終わりに

だわりのコーヒーを頻繁に飲むようになると、次第にそれまでは気が付かなかった香りや甘さ、産地の特徴が分かるようになってくる。それも突然ではなく徐々に、より敏感に感じることができるようになる。

「(ドリッパー)でそこまで大きく変わらない」と言ったが、こうなるとドリッパーの存在は非常に大きなものとなる。やはり相性の良い抽出器具はあるし、ハンドドリップは調整幅が大きいのも魅力だ。

あなたにぴったりのコーヒードリッパーを使用して、愛着を持って淹れてみよう。ハンドドリップで抽出された一滴一滴は、あなたの日々のCoffeeLifeを今よりずっと豊かなものにしてくれるだろう。