海外で人気のESPRO(エスプロ)トラベルプレスを1ヶ月間使用して感じた残念なところ

ずっと探していたんです。こんなコーヒー用ボトルを。外出先に、お気に入りの挽いたコーヒーの粉だけ持っていけば湯を注いで簡単に『本格』コーヒーが飲める。

そんなの今まで無かったの?そんなに難しいことなの?

って不思議に思う人も多いと思う。カナダ発、世界中で話題となったESPROのどこが画期的で、実際の使用感はどうなのかレビューしてみた。

ESPRO(エスプロ)社とは

エスプロ社は2人のエンジニアにより設立された。マサチューセッツ工科大学を卒業した彼らは問題を解決するのが大好きな理系男子で、共通の話題(難解な問題)はコーヒーを抽出する際の安定性であった。

バリスタでも素人でも味にブレの無いコーヒーを作るにはどうしたらよいか?という難問に対して彼らが出した答えは『人間が行うすべてのことから変化が起こる可能性を取り除く』という目標にたどり着く。

そうして多くの試行錯誤を繰り返し、最初のESPROが誕生する。ダブルウォールの容器により湯温は一定に保たれて、シリコンで密閉された真空シール(vacuuum seal)は、抽出後の粉とコーヒーを分離することに成功。そしてダブルマイクロフィルターにより微粉の発生を抑え込んだ。それはフレンチプレスの良さを活かしつつ、ウィークポイントを解決し、飲む場所を問わない携帯ボトルで実現した。

欧米のCoffeeLoversはこの発明の偉大さに気が付き、瞬く間に有名な企業となった。

何がすごい発明なの?

通常の金属フィルターよりも9倍(外側)と12倍(内側)もの細かいダブルマイクロフィルターを搭載。これによりコーヒーをプレスした際の雑味の原因となる微粉の多くを除去することが可能に。米国で特許取得した技術で、ESPROのボトルを紹介するサイトでは必ず取り上げられている。

たしかにダブルマイクロフィルターによりフレンチプレスで感じる微粉の粉っぽい飲み口を大幅に軽減することができる。だがそれ以上に私が画期的だと思ったのは、抽出後の状態でボトルに長時間粉を残しておいても、密閉真空パッキンとフィルターの効果で過抽出にならない点である。厳密にいうと過抽出となった液体が飲み口のほうに流れ出てくることが無いということだ。
 この雑味の原因をセパレートできる機能って本当にすごい発明だと思う

信じてもらうことは難しいだろうが、私もこの仕組みの商品を製造したいと本気で思っていた。ボトルにグラインドしたコーヒー粉だけを放り投げて外出。職場や、アウトドアで湯を沸かしたらプレス抽出。そしてプレス後の抽出された粉を技術的に分離して雑味を発生させない構造のボトル。だが分離の方法が思いつくことは無かった。プレスを引き上げて粉を取り出したり、手間が加わると普通に抽出したコーヒーをボトルに入れれば良いという結論に負けてしまうからだ。

 

実際にフィルターを装着した状態で中心軸を外した画像。ボトルの内周に真空パッキンがぴったりと密着しているのが分かる。実際に帰宅後に、抽出後8時間以上経過したボトルからフィルターを取り出すと、パッキンの下に真っ黒の過抽出のコーヒーがしっかりと分離されて残されているのが確認できた。

10時間以上放置してもボトル内へ過抽出のコーヒーが混ざり合うことは殆どなく、プレス式らしい美味しさとプレス式では感じることの出来ないクリアな質感を保っていた。

一ヶ月間使用して感じた不便さ

ここまでは自宅でESPROトラベルプレスへコーヒーを淹れて作った状態のボトルを持ち出す場合の評価である。だが私がこのボトルを購入したのは、職場で淹れたてコーヒーを手軽に飲める魅力だ。

多くの人もそうだろう。自宅で作るのが前提であれば、ハンドドリップやフレンチプレスなどで淹れたコーヒーをボトルに直接ないし移し替えればよく、その後の抽出後の粉との混ざり合いによる雑味の発生など気にする必要はない。

大半の人がこのボトルに求めるのは外出先で抽出器具なしで、お湯を注ぐだけで本格コーヒーが飲めるところに尽きるだろう。ではその環境下での使い心地はどうだろうか?

MAX表示が非常に見えづらい

コーヒー抽出において目盛りが見えづらいのは致命的ともいえる問題だ。ましてやバリスタと素人が淹れるコーヒーの境界線やブレを無くすことを掲げているのであれば、コーヒー豆(粉)の量と湯量のバランスは医者にとってのレントゲン写真のように必須の情報だろう

極めつけはMAXまで入れると450ml程度の容量が入るが、粉が吸水する分を差し引いてもこの量のコーヒーを僕は一度に飲むことは無い。美味しく飲める量としては150ml~200mlくらいで飲むのことが大半だが、その目盛りが存在しない。湯量を知る術も無いため本格的なコーヒー抽出において一番避けたかった『勘』に頼らざる得ない

スケールを用意すればいいだろと思う人もいるかもしれないが、前述したようにESPROに求めるのは簡易さと本格さのバランスなのだ。味だけ求めればもっと美味しい淹れ方はいくらでもあり、外出先にスケールまで用意するなら他にも簡易な淹れ方はあるのだ。

4分の抽出時間

浸漬式なんだから抽出まで4分なんて当たり前でしょ??そう当たり前なんです。でもてっきりお湯を入れてボトルを持ち歩けば自然に鞄の中で良い具合に抽出くらいしておいてくれるものかと。

だって明らかに普通にフレンチプレスやるのと何も変わらないんだよね。抽出の手間も、掃除の手間も。それがボトルの中で行われるだけ。

雑味とか過抽出なんてのを分離する機能も、ボトルの外で行えば気にする必要だって無い訳だし。それにダブルマイクロフィルターといえど、カップの底には微粉は僅かに残るし、味はやっぱりペーパーフィルターの方がクリーンで美味しいからね。
 抽出終わってるのに、コーヒーカスをボトルに閉じ込めたまま持ち歩くことに不可解さを覚えてしまったよ

掃除が面倒

部品が多いというのは掃除をする箇所の多さや、破損・摩耗可能性を高める。パッキンは密閉を維持するために欠かすことが出来ないが、高温の湯と直接触れる箇所で長く使用すれば劣化は避けられないだろう。部品交換にも費用がかかることを考えると必ずしも経済的とは言い難い。

画像の軸部分も汚れが付着しやすく、ネジ部にコーヒーが入り込むため衛生面を考えて毎回外して乾燥させるようにしている。そして一番面倒なのは2層のフィルター部とボトル下部に残るコーヒーカスだ。粗挽きとはいえフィルターに張り付いた粉を丁寧に洗い流し、ボトル下部の大量の粉も清掃する。紙のフィルターの有難さを実感するし、僕には到底続けられるルーティンにはならなかった

良かったところは?

もちろん高評価の部分もある。例えばESPROの比較対象として真っ先にあがるフレンチプレスと全く同じ条件下で抽出した味覚を比べてみた。結果としてはエスプロの味が圧倒的に好みであった。特にシャフトを降ろした後に、放置時間が長くなるとその差は歴然だ

フレンチプレスはワイルドな風味が増して雑味も出始めるが、エスプロはダブルマイクロフィルターとパッキンの効果でほぼ変化がなく、クリアな飲み心地であった

 

抽出したコーヒーの見た目に違いは感じられなかったが、味と質感は異なったものになっている。
(左:ESPRO  右:Bodumフレンチプレス)

物凄く軽い

この“ウルトラライトトラベルプレス”は名前のとおりシャフトやフィルター部を外して水筒として使用した場合、重量は僅か210gと物凄く軽い。保温性能も良いので普通の水筒代わりに使用することも可。

おすすめの粒度(メッシュ)

推奨は粗挽きとなっているが、一ヶ月使用してプレスのオイル感とクリアな質感とのバランスでおすすめの粒度が中挽き。画像のサイズで、みるっこ#6くらいが一番美味しかった。

まとめ

発想は素晴らしいが、画期的な発想が故にCoffeeLoversが求める簡易さが置き去りにされたしまったような気がする。初めてプレス式コーヒーを使用する人ならともかく、様々な味を体験してより本格的な味を手軽に求める愛好家には作りが大雑把すぎるのでは無いだろうか。

どんなに優れたフィルターでも湯量が20gブレたら抽出されるコーヒーは全く異なった味になってしまう。何度もいうが抽出器具でありながら湯量が分かる手段が無いのは致命的だ。そして、コーヒーは美味しく飲める温度や適度な量というものがある。

かなり期待した商品だったが、毎日の帰宅後の掃除の時間が決め手となってお蔵入りが決まった。残念だか僕の使用環境には適さなかった。これであればClever(クレバー)で抽出後にボトルへ移し替える方法で良い。現在エスプロに使われているフィルターは改良を繰り返し第4世代になるという。フィルターだけでなく、商品全体がさらなる改善が進むことを期待したい。

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