一部のZASSENHAUSコレクターやマニアから言われ続けてきた話。
ザッセンハウスが最も作り込み精度の高かったとされる西ドイツ時代のオールドザッセン。この時代のコーヒーミルは使用された木材や鉄の材質が良く、熟練の職人により一つ一つ丁寧に製造されていた。そのため現代の機械化により大量生産される高級グラインダーよりも性能が優れるという議論。
半世紀以上前の技術が、現代に勝る。日進月歩、技術革新を超えた何とも夢のある話。今回、この真相を現代最強のハンドミルと称されるComandanteと比較して検証してみたい。
ザッセンハウス コーヒーミル ラパス
Zassenhaus 公式HP
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検証するにあたって
この手の検証をするにあたって、検証者の思想のポジションはとても重要になる。懐古主義の思想が強いオールドザッセンのコレクターであれば、当然そちら側に有利な検証となりやすい。反対も然りである。
では僕のポジションはというと…
実はヴィンテージミルのちょっとしたマニアである。
アンティークミル(zassenhaus、peugeot、PeDe Dienes)の型番検索から当サイトへやってきた方は分かると思うが、過去記事でコレクションを一部紹介もしている。
Googleで「オールドザッセンとは」と検索すれば1番上に出てくるのは僕の記事であるし、そもそもアンティーク (ブロカント)ミルについてこのブログを始める随分前に僕がドイツの文献より翻訳してネット上に掲載したものが、有り難いことに未だに色んなところで使われている。
1950sのドイツを中心とした『コーヒーミル戦国時代』という言葉なんかも僕が考えた造語だが、かなり定着している。
そんなヴィンテージミルLoverの僕が今回の検証に臨むのだから決意と覚悟は相当なものだ。しかし、CoffeeLoversが知りたい真実の情報を届けるサイトの使命として、中立に検証する。たとえ愛するコレクションのオールドザッセンが敗北を喫する結果になろうとも。
使用するZASSENHAUSコーヒーミル
今回この検証に使用するのはZASSENHAUSの中でも発売時期が割と新しい№169というモデル。
このミルを選んだ理由は手回しコーヒーミルの心臓部とも言える軸が非常にしっかりと固定され、大型な形状が高い安定性を実現する。ザッセンハウスの中でも最も精度の高いグラインドを可能にすると言われているからだ。
ちなみに外見だけみると、現在メリタジャパンから販売されているLa PAz(ラパス)と同じ。しかし今回使用するモデルは東西ドイツ統一がされる前の1980年代に製造された貴重なもの。そしてこの検証のために長年自宅で保管してきたデッドストック(未使用品)を使用。
木箱裏面には“169 western Germany”のスタンプが刻印
さて、およそ40年間一度も使用されずに本日を迎えたオールドザッセンの実力はいかに。
前置きが長くなったが、検証を始めよう。
TEST SIEVE(ふるい)により微粉量を測定検証
検証方法はいたってシンプル。試験用のふるい(250μm)を用いてグラインド後の微粉をセパレートし微粉量を測定。コーヒーグラインダーの精度を粒度のブレで数値化して比較する。
専門的には100μm以下を微粉と呼ぶことが多いが、粒度のブレをより捕捉するため250μmを使用しているよ
10gの豆を用意
Zassenhaus №169 微粉量
さずがは手回しコーヒーミルのKINGと言われたザッセンハウス。ザクザクと豆を刻んでいく感覚がハンドルを通して手に伝わってくる。
数十年間このときを待っていたかのような心地よい音を部屋中に響かせながら、音と、挽きたて豆の幸せな香りを放つ。現代のコーヒーミルには無いノスタルジックな雰囲気がある。
【中細挽き ザッセンハウス№169】
拡大しても粒度がよく揃っているのが分かる。鋭利な刃で豆も充分にカットされている。約40年前からやってきた器具とは到底思えない素晴らしいグラインドだ。
篩(ふるい)に移し微粉を測定。
グラインド10gあたりの微粉量:1.4g
結果は上記のとおり。250μで1分間ほど念入りに篩ったのでそれなりに微粉も発生している印象。同条件でコマンダンテを測定していこう。
Comandante C40(コマンダンテ)
続いてコマンダンテ。言わずもがな世界中のプロのバリスタも愛用する、手回しコーヒーグラインダー。内蔵されるボールベアリングによりハンドルの回転がアシストされるためサクサク軽快に豆がCUTされていく。
【中細挽き コマンダンテC40】
この均一性は脱帽。最強と言われる所以がよく分かる。
明らかに微粉が少ない。。
グラインド10gあたりの微粉量:0.5g
結果は驚異の0.5g。グラインドは軽く、そして速い。何よりも音が静かだ。改めてその性能の高さに驚かされた。
結果考察
アンティークコーヒーミルのコレクターである僕には現実を突きつけられる結果となったが、清々しいほどの力の差でもあった。グラインド10gあたりの微粉量はザッセンハウスが1.4g、コマンダンテが0.5gと歴然。
当たり前だが250μmのふるいにかけると、この網目よりも細かな粉が下段の受け皿へ落ちる。微粉が多いということは狙ったメッシュ(粒度)とは異なった粉が多く発生したことを意味する。
嗜好品のコーヒーにおいて微粉量が味の善し悪しを決めるとは必ずしも言い切れない。しかし、大半の人にとってなるべく抑えたほうが良いことは疑う余地はないはず。コーヒーグラインダーがその精度を常に追い求めてきた歴史を考えれば、それ以上の議論は不要だろう。
おわりに
オールドザッセンが半世紀の時代を超えても未だに最高のコーヒーミルであるという噂の答えは、残念ながら否であった。“最高”という言葉が、そのグラインド精度を問うものであれば100%そのとおりだ。
はるか昔、ドイツでZassenhaus(ザッセンハウス)の職人たちが日々研鑽しながら家庭用のコーヒーミルを製造した高度な技術と構造は、同じドイツで現代のComandante(コマンダンテ)として受け継がれたんだと思う。伝統を受け継ぎ、現代の技術を取り入れて。
アンティークミルのLoversたちも気を落とす必要はない。それらの人たちに改めて語る必要も無いだろうが、コーヒーの美味しさは、グラインダーの精度だけが全てでは決して無いのだ。その空間や、体験、器具への愛着など味覚以外の部分がとても大きい。どこで飲むか、誰と飲むか、どんな時に飲むか。
あなたのお気に入りののコーヒーミルでこれからも素敵なCoffeeLifeとその一杯を。
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