みるっこR220の『カット臼』タイプが手に入った。
これずっと気になっていた。なぜかというと、FUJI ROYALの代表作ともいえる『みるっこ:グラインダー臼』が半端じゃないクオリティだったから。コーヒーグラインダーを探している人には僕が自信持ってオススメしたい器具。
そんなグラインダー臼に対して、FUJI ROYALがわざわざ作った『カット臼』は一体どんな性能で、どんな人の使い方に合うのか。エスプレッソ挽きは実用レベルなのか。読者からの質問も多いこの違いについて実機を使用して比較レビューしていこう。
FUJI ROYAL みるっこR-220についてどこか懐かしさを感じるフォルムに、聞き覚えのあるグラインド音。室内にフワッと広がるコーヒーの豊かな香り。喫茶店が好きな方ならお店で使用されているのを一度は見たことがあるのではないだろうか[…]
【カット臼】と【グラインダー臼】の違い
そもそも【カット臼】と【グラインダー臼】の違いについてだが、上の画像を見てもらえれば一目で分かるのではないだろうか。左がカット臼、右がグラインダー臼。刃の形状が全く異なることが分かる。
創業当初からずっとメイドインジャパンにこだわるモノづくりは、機械化が進んだ今でも職人による手作業で作られる。息を呑むほどの美しさだ。
ミルにとって生命線となる刃に、富士珈機が業務用グラインダーで培った技術が惜しみなく使用されている。この価格帯でこれだけの技術が詰まったミル刃は見つけることはできないだろう
混同してしまいがちだが、電動グラインダーの刃で大きく2つに分類されるコニカル刃とフラット刃とは別の話。フラット刃グラインダーの中に、さらに種類がカット臼とグラインダー臼のタイプに分かれている。
グラインダー臼はFUJI ROYALの独自の技術と思ってもらって良いだろう。形状の差はあれど通常はフラット刃=カット臼となる。
・コニカル刃・コーン式…立体的な螺旋形状。円錐形。フラット刃よりも低速な回転で豆を擦り潰すように砕く。回転数が低いため騒音や熱の発生を抑えることが可能
・フラット刃(カット臼とグラインド臼)…平らな形状の上刃と下刃が高速回転して豆を切り刻むように挽くタイプ。近年では業務用の最上位モデルでもフラット刃が使用される機種が増えている(EK43やE80S、Mazzer majorなど)。カット臼は無数に並んだ鋭利の刃で切り刻むイメージ。グラインド式は臼のように挟み砕いて挽くためどの粗めの粒度ではカット式より均一性が高いことが多い。強いモーターが必要で摩擦熱が入りやすい。
円錐形(コニカル刃)の家庭用グラインダー(VARIO-Vとwilfa svart aroma)
家庭用の優秀なグラインダーを探していると上記2機種も候補に上がることが多いだろう。これらは左画像にあるコニカル刃が採用されている。
僕はこのWilfaのコーヒーグラインダーに否定的だ。理由は2つあって、ひとつはノルウェーの企業が製造しているとはいえ欧州では13,000円〜15,000円程度で販売されており、日本の25,000円前後の価格が高すぎると感じていた。2[…]
VARIO-V(バリオV)の特徴大は小を兼ねるという言葉があるが、家庭用コーヒーグラインダーにおいてはエスプレッソ挽き用のグラインダーは少し特別な存在となる。大抵のコーヒーグラインダー製造会社はエスプレッソ挽き用とプアオーバー、[…]
平形(フラット刃)バーグラインダーの構造
(カット臼タイプ)
フラットな刃2枚を向かい合うようにセットさせて豆を間に挟み込みグラインドする。味の特徴としてフレーバーがより強調された、近年のサードウェーブコーヒーと非常に相性の良いグラインドとなる。
豆の断面が鋭利にカットされることで湯が成分を通しやすくなる。技術の高いマシン(刃)だと微粉も出づらく、スッキリとした印象の味を表現するのに適している。今や業務用のフィルター抽出のグラインダーでは王様となっているMahlkonigのEK43がまさに代表的なフラット刃だ。
(Mahlkonig EK43)
近年は刃の素材やカット技術が向上しており、エスプレッソ専用マシンでもフラット刃が使用される機種が増えている。フラット刃の弱点でもある豆に伝わる熱についても冷却装置が備わるなど技術革新は続いており、プロの間でも低速のコニカル刃と高速のフラット刃のどちらを選ぶべきかは意見が分かれる。
みるっこR-220製品仕様
本体重量 : 4.6kg
ホッパー容量 : 250g
電源 : 100V 50/60Hz
消費電力 : 130W
粉砕能力 : 400g(毎分)
みるっこ R-220 (カット臼)
FUJIROYAL公式HP
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仕様をサラッと読み流しそうになったけど、粉砕能力400g/minって家庭用の域を超えてるでしょ。
ちなみに、よく比較される同じフラットディスク刃の家庭用高級グラインダーkalita next g(カリタネクストジー)は50g/分だし、先程画像を紹介した世界的にも人気の高いVARIO-Vですら120g/分程度だ。
みるっこR-220がどれだけ桁外れなパワーを持っているか分かる。一杯分程度ならほんの数秒で粉にしてしまう。
【カット臼】挽目検証
挽目調節ダイアルは#1〜#10まであり、各目盛りは0.5段階の調節が可能なため19段階の粗さを選択できる。しかし実際に実用範囲なのは#6くらいまでか。1台あればエスプレッソ挽き〜フレンチプレスなどの粗挽きまですべてに対応ができることだろう。
百聞は一見にしかず。実際のメッシュを見てみよう。
みるっこR-220【カット臼】
【#1 極細挽き エスプレッソ】
【#2 細挽き モカエキスプレス】
【#3 中細挽き ハンドドリップ】
【#4 中細挽き ハンドドリップ、デルター、エアロプレス】
【#5 中挽き ネルドリップ、サイフォン、水出し】
【#6 中粗挽き フレンチプレス、サイフォン】
検証してすぐに感じたのは、均一性は【グラインダー臼】の方が遥かに上だなという印象。特に#5と#6の画像からも分かるように、中挽き以上ではかなり粒度がブレるため、この挽目がメインの使用となっている人にはカット臼はおすすめ出来ない。
粉体の形状も異なる。カット臼の粉は平たく切られている形状が多く確認できた。グラインダー臼ではコロコロとした立方体や粒のような形状が多く、フラット刃で挟み込みグラインダー臼で豆を崩したような特徴が見られた。
なお、カット臼とグラインダー臼の最も細かいダイアルを比較すると上の画像のとおり挽ける細かさにかなりの違いがでた。カット臼はエスプレッソ専用とするだけあってパウダーの粒度。それに対してグラインダー臼はモカエキスプレスに使える程度が限界だ。
グラインダー臼【#3 中細挽き】
多用することが多いハンドドリップの粒度#3を実際に見比べるとグラインダー臼の均一性の高さが分かる。カット臼だと#3.5あたりが同一粒度にあたると思われるが、粉受けを覗き込んだときの圧巻の均一性はグラインダー臼に軍配があがる。
素晴らしい。実に美しい。
微粉量の比較
次に試験用のふるい(250μm)を用いて10gのコーヒー豆をグラインド後の微粉をセパレートし微粉量を測定。コーヒーグラインダーの精度を粒度のブレで数値化して比較する。粉の粗さはハンドドリップに多用する中細挽き(カット臼#3.5、グラインダー臼#3)。
結果は明らかな差が生じた。カット臼で0.7gだったのに対してグラインダー臼では0.1gと極めて僅かな微粉にとどまった。一見するとカット臼の微粉がとても多いように感じるだろうが、一般的なグラインダーの中では0.7gは優秀なレベル。グラインダー臼が際立って微粉量が少ない(少なすぎて専用スケールでないと計測できないほど)結果となった。
ふるい後に残った粉を確認すると、均一性に大きな差があった。カット臼は粒度にブレが出ているが、グラインダー臼はここでも美しいほど安定している。
ダイアルの数字をあげるとこの差は更に大きくなっていく。エスプレッソ挽きの粉質を考慮するとカット臼がエスプレッソ挽き(極細挽き)に照準を合わせた機種であることがよく分かる。
グラインダー臼の完成度すごいな。カット臼のブレは刃の径の短さが原因かな。
エスプレッソでの使用は?(極細挽き)
さて一番気になっていたエスプレッソで使用する極細挽きの精度について。
まず感じたのは#1の画像のをみて気がついた人もいるかもしれないが、粉質がフワフワなのだ。僕が普段使用しているVARIO-Vと比較してもグラインダー臼のエスプレッソ挽きの質は非常に良い。
画像では伝わりきらないのが残念だが、指で上から押してみたり、つまみとってみると差は歴然。これはフラット刃の長所なのだが、コニカル刃に見られる二峰性(粒度分布が異なる2つに分かれる)が発生しづらいのだ。みるっこカット臼の場合は特にこのエスプレッソ挽きの均一性が高く、タンピング時の密度を高めることができる。
flair espressoの抽出具合をチェック!!
近年の家庭用エスプレッソマシンのブームに火をつけたflair espresso。自宅や屋外でエスプレッソを愉しみたい人が増えており、この性能が備わっているかはコーヒーグラインダー選びの大事なポイントになるだろう。
Flair(フレア)の登場は間違いなく家庭用エスプレッソマシンの勢力図を根っこから変える。彼らはこのエスプレッソメーカー市場の時計の針を一体何年分進めてしまっただろうか。先日のMakuakeで驚異の7922%の達成率で約2,000万[…]
(中浅煎り豆を17g使用)
驚いたのがこの嵩(かさ)。VARIO-Vで同量をグラインドしたときにはここまでの嵩になったことが無い。
タンピングをするとキュッと詰まって、ベストな抽出が出来そうな予感。
圧力計を見ながら9気圧でプレス
あれ、全く出てこない。。これは失敗。密度強すぎたな。
#1(中浅煎り17g)では抽出出来なかった。おそらくこの挽目は本格的な電動エスプレッソマシンで使用できるメッシュだろう。圧を何度もかけたが湯が通り抜けることは無かった。
気を取り直して、#2の粗さにして再度プレス。今度は濃厚なとろみのあるエスプレッソが抽出できた。フラット刃のエスプレッソは均一性ゆえか、コニカル刃よりもコーヒー豆の個性がとても強く感じられて美味しかった。
本格的なエスプレッソマシンの抽出にも対応
使用しているマシンはascaso dream PID(アスカソ)
最も細かいメッシュ#1は本格的な電動エスプレッソマシンの抽出に最適。業務用クラスのエスプレッソを愉しめる。
Kalita NEXT Gとの比較
近い価格帯で同様にフラットディスク刃を使用したグラインダーとして比較せずには通れないのはカリタネクストGだろう。最後にここだけは振れておこう。
洗練されたデザイン性や微粉の飛び散らない機能等は置いておいて、生命線であるグラインダーの刃とグラインド性能を比較してみよう。するとこの機種は同じ土俵で比較すべきでは無いことが分かる。
これがネクストGのセラミック刃。鋭利さはなく、フラット刃(カット臼)特有のステンレス鋼で切り刻み粉砕するプロセスでは無い。刃の回転速度も低速を選択しており、モーターのパワーも弱い。
フラット刃はその鋭利な刃を強力なモーターで高速回転させることで切り刻み粉砕をする。遠心分離させながら豆が刃の内側から外側に流れていく際に無数の鋭利な刃でカットして最後は投げ出されて粉が完成する。この工程では刃の性能と、モーターの強さがグラインド精度に直結する。
円錐形(コニカル刃)のように、重力で垂直方向へ豆が落ちていく際に徐々にすり潰されて均一になる仕組みとは異なる。ハンドグラインダーにフラット刃のものが無いのは、手動では必要な回転速度(遠心力)を得られないからだ。コニカル刃は低速回転でも豆や破片を円錐の内刃と外刃で捕捉しやすく均一にグラインドできる。
Kalita NEXT Gはフラット刃に求めるストロングポイントは殆どなく、むしろコニカル刃に近い仕様構造になっている。もちろん短所だけでなく長所もあるがカット臼のフラット刃として性能比較するのは誤りだろう。
みるっこ【カット臼】のレビュー
GOODポイント
やはりエスプレッソ対応であることだろう。しかも挽目は良質で家庭で本格的なエスプレッソを楽しむことができる。特にダイアル#1〜#2の均一性は素晴らしく粉質も文句なしだと感じた。
ご存知の人も多いと思うが、エスプレッソ挽きの性能がグラインダーに備わっている機種は非常に少ない。技術的な要素と故障回避が大きいが、安易に飛びつくとお遊びレベルの質で、まともなエスプレッソが抽出できず結局処分するなんてことはよくある話。
この1台でエスプレッソ〜ハンドドリップの挽目までは十分な精度で対応できるので、まだエスプレッソマシンを所有していなくても興味がある人にも良いだろう。
BADポイント
みるっこについて調べると必ず登場するデメリットだが、これはカット臼でも同様だ。先程記載したとおり、業務用クラスのフラット刃の宿命とも言えるだろう。円盤を高速回転させて豆を挟み切るため構造上、コニカル刃のグラインダーよりも静電気が多く発生しやすい。
上記については強力なモーターで遠心分離させるため飛び散りは仕方ない部分もある。対策については過去記事を参考にして欲しい。
これはコニカル刃よりもどうしても面倒になる。コニカル刃は大抵はホッパーを外したら刃がむき出しになっているので、上からブラシでササッと履き落とせば簡易な掃除は済んでしまう。これに対してフラット刃は密閉された内部に2枚の刃が重なり合っているため、刃を掃除する際の工程はどうしても増えてしまう。
今までグラインダー臼では作動したことが無かったのだが、これが意外と厄介。本来は『異物の混入やモーターの過熱』などで故障の原因となりうる場合に緊急的に作動する装置なのだが、浅煎りなどの硬い豆を#1のエスプレッソ挽きで挽こうとすると起動してしまうことがある。
富士珈機に確認したところ、開発当初はエスプレッソ=深煎りであったため中煎り以下は異物として安全装置が発動してしまうことがあるとのこと。停止するとメンテナンスのとき同様にナットを外し分解清掃が必要となる。時間も豆も無駄にするので注意が必要。
安全装置の作動を回避する方法としては、少量ずつ豆を小分けに投入すること。3〜4gずつ投入するのだが、モーターが強力なのでそれでもあっという間にエスプレッソ挽きは出来上がる。近年はスペシャルティコーヒーの台頭もあり、中煎り以下のエスプレッソも主流となっているのでここは改善をして欲しいところ。
このレトロ感がたまらなく好きな人が多いのは知っている。でもカラーセレクトが微妙かと。特に最近はコーヒーを本格的に始める人の中に、器具の性能とデザイン性を同じ天秤にかける人が多くなった。SNSでの発信も含めて、美味しさだけでは選ばない層もある。この性能だけに勿体ない。
めちゃくちゃかっこいいカラー2つ思い浮かんでいるのでいつか暁屋コラボさせてください(営業)ww
終わりに
みるっこ【カット臼】について徹底検証してきが、一言でまとめると『安定のFUJI ROYALブランド』がぴったりだ。半世紀以上にわたりコーヒーショップで愛用されてきた実績が示すように、部品ひとつひとつが細部まで丁寧に作られているのが分かる。
カット臼とグラインダー臼のどちらか一つなら?と聞かれたら僕は迷わず『グラインダー臼』を選ぶだろう。そのくらい、みるっこR-220グラインダー臼の完成度は極めて高い。しかし、エスプレッソ用のグラインダーを所有していなければ話は別だ。
改善点もあるが、この一級品のエスプレッソの質に特化しつつ、ドリップの挽目までオールインワンで愉しめるグラインダーとしてカット臼は最適解となり得るはずだ。頻繁な取替はおすすめしないが、本体が1台あれば2種類の刃の付け替えも可能できる。
これから遠くない将来、業務用で勢いを増している高性能フラット刃のグラインダーが家庭用に次々と参入してくるだろう。日本製の良質な素材を使い、確かな技術力と経験から長年プロに愛されてきたFUJI ROYAL製品。
これからも私たちのCoffeeLifeを豊かにしてくれる、極上の一杯へと繋がっていくことを期待したい。
今後もさらなる進化を期待しよう。
みるっこ R-220 (カット臼)
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みるっこ R-220 (グラインド臼)
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