久しぶりにこんな衝撃を受けた。
クリーンですっきりとした、苦味の少ない、美味しいコーヒー。それはスペシャルティーコーヒーの特性を十二分に引き出した抽出だった。スイートスポットに入った偶然の抽出かと思い、試しにもう一度抽出するも全く同じ味の抽出にたどり着く。
まるでV60で淹れたコーヒーのようになめらかで透明感の高い抽出。それは他の抽出器具よりもずっと短い時間でDelter coffee pressによってもたらされた。その日からデルターは僕の抽出器具の新しいレパートリーへ迷いなく加わった。
Delter Coffee Pressとは
2019年にクラウドファンディングで資金調達を成功させたオーストラリア生まれのコーヒー抽出器具。『A new way to brew is here. Faster, cleaner & better tasting coffee. 』と掲げるとおり、ハンドドリップのようなスッキリとした味わいを空気圧により迅速かつ、果実感をしっかり凝縮しながら抽出する。
個人的な感想としては、ハンドドリップよりも粉に湯が滞留しないので飲みやすい。クリーンなんだけど、複数回プレスしているので薄くなく、むしろ味はしっかり出てると感じた
Delter (デルターコーヒープレス)
Delter (kickstarter)
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AeroPress(エアロプレス)との比較
比較対象として避けることができないのがエアロプレスだろう。2005年に発売されて以来、CoffeeLoverの抽出器具の代表的な存在として地位を確立。いまではバリスタによるAeroPressの世界大会が開催されるほどポピュラーであるし、ショップのみならず家庭用としても認知度の高い(愛好家の多い)器具となっている。
器具の形状と、空気圧による抽出という点で非常に類似したプロダクトと思う人も多いだろうが、Delter Coffee Pressは一言でいえば、“エアロプレスとは異なった、コーヒー抽出における完全に新しい抽出方法”を可能としている。そう、エアロプレスとは似て非なるものなのだ。
エアロプレスの特徴はの名前のとおり「空気による圧力」をかけて抽出する点。圧力を用いることで、スッキリはしているがコーヒーが持つ甘さやフレーバーがより立ちやすくなる。フレンチプレスのように浸漬してコーヒーエキスが溶け出したところでフィルターを通してハンドドリップのように雑味を除いた抽出が行われる。簡単に言えば”フレンチプレスとペーパードリップの中間のような味”が期待できる。
エアロプレス AeroPressの弱点として海外では広く知られているのは、この抽出プロセス故に制御ができないというデメリット。湯を注いだ際、圧力をかける前にポタポタと望まない抽出が行われてしまう点や、それを回避するためにインバート式(逆さ)にすると裏返しの際に激しい撹拌を生み出してしまう点などである。
これらは再現性の難しい抽出結果の原因となる。
デルターコーヒープレス Delterは上記欠点を完全に克服している。それはコントロール可能な圧力下で、設定された量と時間に基づいてコーヒーを抽出することができる。最大の利点は湯とコーヒーとの接触時間および圧力を完全に制御できることから生まれる「再現性と自由度の高さ」。蒸らし時間、通過時間、ポンプ回数を使用者が自由に理想的な抽出を達成させることができる。
その結果、カップ(口当たり)の透明度が非常に高く、予期せぬ撹拌などによる苦味は一切なく、クリーンな味わいを愉しめる。それもエアロプレスより短時間で行える。
僕はエアロプレスもデルターも両者にメリットデメリットはあると思う。最も大きな差は粉を湯に浸け置き(浸漬)しないこと。急須で煎れる緑茶で考えても浸漬時間や浸漬の有無で味は全く変わるよね
デルターの使い方と上手に抽出するコツ
1)4つのパーツに分解
2)豆を計量 12g〜15g
コーヒー豆と湯量は自分好みで調整すると良い。僕のおすすめ割合は【豆12g:湯150ml】【豆15g:湯190ml】あたり。公式で推奨しているのよりも少し濃く抽出。
少し濃度が濃いと感じらた残ったケトルの湯を少し足せばいいので失敗なく狙い通りの味を出せるよ
蓋の役割をもつドーサーは豆の重さを計量するカップとしての役割も持つ(1杯=6g)
アウトドアではスケールを持っていかなくてよいのは嬉しい
3)中細〜中挽きにグラインド
粉の挽目もお好みで。中細挽きよりの中挽きが相性は良さそうだが、少ししっかり抽出するときは中細挽きでも問題なく抽出できる。
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4)ペーパーフィルターの湯通し
湯温は95℃
※ペーパーフィルターに熱湯+圧力をかけるため、ニオイ移りが出やすい。必ず軽く湯を通す。
Delter coffee 純正ペーパーフィルター 300枚入
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5)セットして湯を投入
湯量は濃度の好みにもよるが、僕はその日の気分で豆12gに対して湯150ml〜160mlを使用。
キャップをセットする際に、しっかりと回らなくなるところまで締め切ること。そうすることで、湯を投入した際のプレス前に、フィルターへ湯が流れ出てこなくなる。
これ美味しく抽出する上でとっても大事!意識的にやってみて!
6-1)【1回目】ファーストプレス 30ml/150ml 蒸らし20秒
使用する豆の量に合わせて蒸らしのためのプレスを実施。蒸らしを意識してゆっくりと圧をかけて全体へ湯を沁み渡らせて凝縮したコーヒーを落とす。プレス後20秒ほど待って蒸らす。
この蒸らしができるからペーパードリップのようなクリーンな美味しさになるんだね
6-2)【2回目】セカンドプレス 60ml(90ml)/150ml
6-3)【3回目】サードプレス 60ml(150ml)/150ml
初回の蒸らしに使う湯量や、総プレス回数、プレス時間、各プレスの抽出湯量はアレンジして自分の好みを見つけると良い。回数が少ない方があっさりとした味覚になるし、湯量は前半を大目にするとクリーンさが増す。
この自由度の高さがDelterの醍醐味。僕の基本形は30mlの蒸らし→残りの抽出量の1/2→残りの抽出量の1/2がバランス良いかな
抽出完了
出来上がったら濃度差があるのでスプーンで軽く撹拌したら完成。スッキリとした味わいだがペーパードリップでは味わえない香りの良さと酸味のバランスが愉しめる。
また数ヶ月使用して驚いたのが、コーヒー豆が少なくても抽出される味に影響が無いことだ。僕は普段ハンドドリップの場合は15g抽出で行うことが多い。それは12gでは粉が少ないため湯をしっかりと絡めることが出来ずに抽出がうまく行かないためだ。
コーヒーショップでも15g以上で抽出する店は多く、適切な粉量以外で抽出しようとすると粉の膨らみ等、コントロールが著しく難しくなる。その点、デルターの12g抽出のバランスの良さは、少量のコーヒーを飲みたいときなどにも使い勝手がよく豆の消費量も適正に抑えられる。
後片付け
これがまた非常に簡単。2回程度、空の状態でプレスして残存する水分やコーヒーを排出。キャップを外すと写真のような状態になっているので、ゴミ箱へめがけてプレス。残ったカスを軽く水で洗いだら掃除終了。
追記:2021.5 LIGHT UP COFFEE / 川野氏の抽出動画
“美味しいコーヒーで世界を明るくする”という言葉とおり、日本のコーヒーシーンに次々と新しい風を届けている川野氏。You Tubeで紹介されている抽出レシピがとても分かりやすいので購入後のイメージを掴みたい方は見ておくとよいかも。
ちなみに、動画内で川野氏が言っている「美味しいのは当たり前で、気に入っているのはデザインと、抽出中の湯の通る気持ち良さ」と話されていたが、全く同じ意見だ。僕がこのブログ内でもいつも言っていることだが、デザインを好きになることはコーヒータイムの満足感そのものに繋がると思っている。
ぜひ参考に視聴して観てほしい。
レシピも試してみたが美味しかった。蒸らし時間長めに取るのもありだね
海外での評判
文章では良さを全て伝えきれないので、実際に使用していただくのが一番だが、海外のレビューがとても良いので少しだけ紹介したい。
コーヒーに詳しい人のコメントが多いのが信憑性を感じるね
とにかく評価が抜群に高いのだが、特筆すべきはエアロプレス愛好家からも高い評価を得ているレビューが目立つこと。これはエアロプレスを日常的に使用しているショップのバリスタからも同様の声があがっている。またHARIOのV60が比較対象に多く出る点もDelterによる抽出された味の特長なのであろう。
追記:2020.7 国内レビューについて
日本でのレビューにパッキンの劣化についてコメントが数件みられたのでその点について考察。僕はデルターを週3以上は使用して1年以上が経過するが、使用している2台に劣化は見られない。
耐久性の問題としてあがっていたのはブリューチャンバー(本体)に押し込むプランジャー先端のゴムパッキンの劣化によりプレス圧が弱くなるというものだが、構造への理解に相違があるかもしれないと感じた。
(プランジャー先端のシリコンゴム)
デルターはもともとエアロプレスのように一度のプレスで全量を抽出する構造になっていない。複数回プレスすることを前提としているため、プレス後にプランジャーを何度も引き上げることを可能にするよう密着度は高くない作りとなっている。
そのため新品購入時からプレスする上部箇所(ドーサー部分)によってはもともと空気がポコポコと多少漏れることがあるが、これ自体は抽出に何の問題もない。前述したが、エアロプレスとは似て非なるもの。浸漬した液体を高圧で絞り出す(プレスする)仕組みでは無いのだ。
あくまでも、キャップ内に格納した粉とブリューチャンバーの湯をセパレートして、複数回にわたり湯を透過させる方式なのがデルターの特徴。透過法と浸漬法。全く異なる抽出である。
(この蜂の巣みたいなのがジェットシール)
そのためキャップとブリューチャンバーを仕切るシリコンのジェットシールが機能しなくなれば問題だが、よく作り込まれているので不安は少なそうだ。清掃をした際にジェットシールを反対に取り付けているケースなども散見されたので下記画像を参考上、ご注意願いたい。
※こちらが上側(湯を投入する側)
試しに粉を入れず空の状態でキャップを外して自身の太ももあたりに押し付けてプレスしてみるとジェットシールに空気圧がしっかりかかっているのが確認できることだろう。ご質問も多いので一応追記しておいた。
終わりに・Delterのレビュー
どちらが優れているかは嗜好の違いなどもあるだろうが、僕から一つ申し上げられることがあるとすればエアロプレスが世に生まれて2005年から14年が経過しているということ。フリスビーメーカーの偉大な発明から、人々は更に革新を求めてきたということである。
エアロプレス派の人も、初めての人も、実際に使ってみればよく分かるだろう。デルターはあなたのCoffeeLifeを屋内外問わずに豊かにしてくれる素晴らしい道具であることは間違いない。この記事があなたの新しいコーヒー抽出器具のパートナー選びの一助になれば幸いである。
Delter (デルターコーヒープレス)
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